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歯を守れる 歯科衛生士が、 大切にしていること

「歯科医師は、患者さんの
将来の健康を設計するプロデューサー」

こう語るのは、古市歯科医院の院長先生です。
患者さんの“健康”にフォーカスし、予防医療を提案する医院を目指すなかで、歯科衛生士の存在の大きさを日々実感しているといいます。

そんな医院からの期待を受け止め、しっかりと地に足をつけて前に進んでいるのが歯科衛生士の木幡雪乃さん。
“患者さんの将来のお口の健康を一生涯守る”という長く壮大なプロジェクト達成に向け、コツコツと努力を重ねています。

患者さんの健康は、一日にしてならず。
本人の努力はもちろん、その陰には歯科衛生士による支えがあってこそ健康な歯と歯肉を守ることができます。

患者さんに健康な人生を歩んで頂くため木幡さんは日々どんな準備を積み重ねているのでしょうか。

実行、反省、改善。
その積み重ねが、結果を導きます!

今年の4月で臨床8年目を迎えた木幡さん。
メインテナンスに通い続ける患者さんを診ていくなかで、ひとつの発見がありました。

「どんなに修復物が多くても、歯科医院において定期的なメインテナンスを受けて頂ければ多くの歯を残せる!」
長期的な視点で患者さんをサポートしてきたからこそ確信できた、“歯は守れる”という事実。
さらなる成果を出せるよう、歯科衛生士としての努力を10年20年と続けています。

“やり替え”はしなくても済む!

編集部(以下T) 歯は確実に守れると気づいたきっかけは何だったのですか?

木幡さん ある患者さんの口腔内を見て、思ったんです。その方は私がここで働く前から通われているのですが、最後の治療をされたのは10年前。3ヶ月ごとのメインテナンスとセルフケアを続けているから、治療の“やり替え”がないんですよね。ご本人も「ケアしておけば歯は残るのよね」とちゃんと自覚されていて。経験を積むうちにそういった患者さんが他にも出てきて、少しずつ確信していった感じです。

 その事実を目の当たりにして、どんな気持ちでしたか?

木幡さん まずは、メインテナンスの重要性を実感しました。それと、直接関わる歯科衛生士が主体となってやっていかなきゃいけないんだと改めて思いましたね。特に当院は担当制ですから、最初の診査はもちろんメインテナンスの必要性も私たちのほうから患者さんに伝えます。情報提供には多くの引き出しが求められるので、自然と気合いが入ります。

 成果を出すために、何か工夫したことは?

木幡さん これです、このマイノート! 次回はこういった情報をお伝えしようということを書き留めておいたり、先生や先輩からいただいたアドバイスを記録したり。とにかく思いついたことをすべて記録していました。よく使う資料や勉強会で学んだことも、実践ですぐに活用できるようこまめにメモしていましたね。

 ノートに記録することで、具体的にどう役立つのでしょう。

木幡さん うまくいったときといかなかったときの検証が、しっかりできるんです。もっとカリエスの話を多くしたほうがよかったかなとか、カンタンな言い回しにしないと患者さんには伝わらないかなとか。実行して、反省して、改善して。結果を出すって、その繰り返しですよね。ちょっとずつ自分をバージョンアップさせるためのツールという感じです。

根拠のないPMTCは、占いと一緒です

 改めて思う、歯科衛生士として欠かせないものは何ですか?

木幡さん PMTCは外せないと思います。歯科医療の中で、歯科衛生士にしかできないことなので。まず、リスクの高いところを患者さん自身では見つけることができませんよね。それから、歯ブラシが届かないところのケアにはプロの器具が必要です。患者さんにも、「お家で磨けないところを念入りにお掃除させてください」と必要性を伝えていますよ。

 患者さんに提案するときの、ポイントなどあるのでしょうか。

木幡さん 来院される患者様にはだ液検査を必ず受けてもらうようにしています。今お口がどんな状態で、PMTCを定期的に続けていくとどうなるのか。検査結果をもとに、将来をイメージしてもらうようにしています。

 だ液検査にたどり着いたきっかけは?

木幡さん 何のためにメインテナンスを続ける必要があるのか、その根拠が明確でなければ患者さんの動機づけにもならないと思ったんです。

以前、どこかの先生がおっしゃっていました。検査もしないで「何ヶ月ごとに来てください」っていうのは、占いと一緒だって。お腹が痛くなって病院に行って、「じゃあとりあえず切って中を見てみましょうか」なんて言われたらイヤですよね。ちゃんと、何の病気でどんな治療が必要なのか診査がありそれに対する治療法を説明してから処置をしてほしい。それは歯だって同じだと思います。

又、疾病においても原因がありその結果があるのですから、そのことを患者様が知識として理解を深めて初めて同じことを繰り返さない訳です。その情報を分かりやすく提供することが医療者としての使命かなと思っています。

自ら食習慣を変えてくれました

 成果につながったエピソードがあれば教えてください。

木幡さん 30代の女性患者Aさん。修復物が多く全身疾患のリスクも高かった方です。
最初は、治療だけで通われていました。メインテナンスのご案内は何度もさせていただいたのですが、どうしても来院が途絶えてしまい、それが2~3回続いたあるとき、思いきって腰を据えてお話しさせて頂きました。「何か起こったときだけ来院するという状態をずっと繰り返していると何回も削ることになって、結局歯を失ってしまいます。時間もお金も健康も損なうなんて、もったいないですよね。まずは検査をして、Aさんにあった予防プログラムを立ててみませんか?」
今までもいらっしゃるたびに同じお話をさせていただいていたのですが、時間が経って考え方も変わったのでしょうか。3回目にしてようやくすんなり受け入れてくれました。

 検査の結果はどうでしたか?

木幡さん 案の定、リスクは高いと分かりました。修復物が多く入っている分、菌の数も多く、それをお伝えし、2ヶ月ごとにメインテナンスを受けて頂くことにしました。歯磨き指導とキシリトールの提案をして、PMTCも続けました。それから半年くらい経ったのち口腔内は、ベタベタだったプラークが突然サラッとした感じに変化していました。

 患者さんの反応はどうでしたか?

木幡さん 「最近口の中がサッパリしてきたんですよね」と自覚されていました。そして食習慣も意識して変え始めているとのことでした。口の中がよくなったことで、キャンセル続きだったアポイントが定期的に埋まるようになりました。あぁ、この方はもうちゃんと予防のレールに乗って頂いたと実感でき、嬉しく思いました。

将来まで見据えられる、目を持ちたい

 仕事に一生懸命になれる源は、どこにあるのですか?

木幡さん 自分自身の経験が大きいのかもしれません。私は小さいときに自転車から落ちて前歯を折った経験があるんです(笑)。それから10年間は被せ物で過ごしてきたのですが……。ここで働き始めた頃、先生にすすめられたのは矯正治療でした。バイト(咬合)がかなり深い状態であった私の前歯は、将来的に下顎が上顎の前歯を突き上げる可能性があり、それにより、前歯の歯根破折のリスクが高いことを教えられました。

最初は正直、「見た感じもそんなに悪くないのに本当にやる必要があるのかな」と疑問でした。でも、先生は“折れて被せたところ”だけでなく、将来的に健全な口腔環境を長持ちさせるという視点で提案してくれていたことが臨床経験を積むことで理解できるようになりました。このままずっと強く突き上げていたら、メタルボンドがダメになってしまう。そこまで考えてもらえたことが、すごくありがたかったですね。そんな先生の姿を見て、私も患者さんの将来の予測ができる歯科衛生士になりたいと思いました。

 仕事に就いたばかりの頃に比べて、だいぶ近づいてきましたか?

木幡さん どうでしょう(笑)。ただ、歯科衛生士としてどういう気持ちで仕事に取り組まなきゃいけないのかっていうのは明確になってきた気がします。一点集中型ではなく、全体的に見られるようになったというか。そうは言っても衛生士人生はまだまだ長い! 課題はたくさんありますね。

 ステキなお話を、ありがとうございました!

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